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染みついた考えとこれから

  • 札幌いちご会 事務局
  • 6月13日
  • 読了時間: 4分

吉成健太朗(よしなり けんたろう)


<いちご通信224号(2025年6月号)より抜粋>



私は 脊髄性筋萎縮症 (せきずいせいきんいしゅくしょう)という病気で、

歩くことはもちろん、

日常生活のほとんどを人の助けに頼っています。


今年で 30 歳になり、この病気とは

長いつき合いですし、これからも続いていきます。


地域生活に移行してからも、

すでにかなりの時間が経ちました。

自分の一日を自分で決められるということにも、

やっと慣れてきました。


11歳のときに病院に入院したので、

人生の半分以上を病院で過ごしてきた私にとって、

今の環境は目まぐるしく変化しています。

とはいえ、長い集団生活で身についた習慣は、

簡単には消えてくれません。


小学生の頃までは、

誰にでもちょっかいを出していたのを覚えています。

あの頃に迷惑を掛けた人には頭が上がりません


自分より10 歳以上年上の患者さんの病室に遊びに行っては、

おやつをもらったり

ゲームで遊ばせてもらったり。

年相応のいたずらをして怒られもしました。


ところが中学生になる頃、

「怒られること」 を

強く恐れるようになりました。


集団生活ではルールを破れば叱られますが、

ルールを守っていても褒められることはまずありません。


ただ当時の私は無意識にこう気づいたのです。


「手間を取らせない」 ことは評価される、と。


もちろん同じ病棟にもさまざまな患者さんがいました。

要求が多い人、わがままを言う人、十人十色です。


その中で、極力 「手間を取らせない」人は

職員の評価が高かった。


当時はそこまで深く考えて行動していたわけではありませんが、

このころから

「いかに人に手間を取らせずに過ごすか」

を意識するようになりました。


病室には職員を呼ぶためのナースコールがあり、

夜の体位交換など必要なときに押します。


けれど私は 10 年間で

両手で数えられるほどしか押していません。


病気の都合で自分で体の向きを変えることはできませんが、

8人部屋だったので、

誰かが押したときに便乗すれば 手間が減らせる。

そう考えていたからです。


何をするにも人の手助けが必要な体ですが、

「お願いをひとつでも減らす方法」を

いつも探していました。


この考え方は今も染みついたままです。


そんな私がいちばん落ち着けるのは、

パソコン に向かっている時間です。

どんな作業でも基本的に自己完結できますから。


幸い、病院にいたころから

先輩たちに教えてもらっていたおかげで

パソコンには少し詳しいほうかもしれません。


仕事もゲームも、

自分の好きなタイミングで始めたりやめたりできる。


「誰にも手間を取らせない」 という私の

集大成がパソコンに詰まっている。

そんな気持ちでこの原稿を書いています。


とはいえ、この身についた考え方が

「正しい」と思っているわけではありません。


地域生活を始めた今、私は自由です。

何をしてもいいし、どこに行ってもいい。


同じように地域で暮らしている仲間の中には、

とても活発に出かける人もいて、

私は 「すごいなぁ」 と感心しています。


外出は私にとってはとてもハードルが高いことで、

福祉車両の手配や準備なども含めると

まるで一大イベントのように感じてしまいます。


去年の10月に私が退院して丁度一年だったので、

パーティーを企画してくれて参加したのですが、

パーティー自体はもちろん、とても楽しくて良いものでしたが、

そこに行くための準備は結構大変でした。


「普段と違うことをお願いしたら迷惑じゃないかな?」

などを考えてしまうのです。


私の所に来てくれているヘルパーさんは

皆さん親切にしてくれるので、

そんなふうに思う人はいないと分かっているのですが、

色々考え込んでしまうせいで

行動を起こす腰が重たくなってしまうのです。


「手間を取らせない」 という考え方を少しゆるめて、

これからはもっと行動的になれるよう、

少しずつ変わっていきたい。


動画クリエーターを目指しているので、

勉強会や交流会などがあれば参加しようかと考えています。


それが今の目標です。



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