2023年講演会「虐待は無くならないのか?」(中野喜恵さん講演)
- 札幌いちご会 事務局
- 4月25日
- 読了時間: 4分
2023年11月18日、札幌市生涯学習支援センターちえりあ にて、
NPO法人札幌いちご会講演会「虐待は無くならないのか?」を開催しました。
講演してくださったのは、
土本秋夫(つちもと あきお)さん :ピープルファースト北海道、NPO法人共生舎理事
中野喜恵(なかの よしえ)さん :社会福祉法人はるにれの里
渡邊譲(わたなべ ゆずる)さん :株式会社ライズリング代表
の3名でした。
こちらは中野喜恵さんの講演記事をご紹介します。
<いちご通信220号より抜粋>
「なぜ虐待が起こるのか」
~障がい者本人と向き合って語り合うことがやりがい。~
名前 中野 喜恵(社会福祉法人はるにれの里)

私は福祉の仕事をしてかれこれ30年近くたちます。
私の仕事に対する理念というものは、
自分が今までかかわりを持った多くのご本人さんたちから学んだものです。
特にご本人のニーズなしでは、
また、ご本人の得意なことやいいところを知らなければ
この仕事が出来ないと教えられたと思っています。
言葉で伝えられるご本人さんたちからは、
「知ったかぶりする支援者が一番嫌い」と聞きました。
「自分の事なのに、教えてもらえない。」と聞いたことも。
支援者としては
「貯金額をお示ししたら使いたくなってしまうのではないか?」
という考えもあるのかもしれませんが、
そこがなんとも切なく。
ご本人さんの発した言葉で立ち止まる。
この人はこういう人だから・・
の考えはどうなのだろう。
伝えられない障がいをお持ちの方も。
私は現職場で行動障害状態像の方の一人暮らしを実践した経験があります。
当時の若いスタッフたちは支援会議の際にこのように言っていました。
「暮らすってなんだ?自分らしく生きるってなんだ?」。
私はスタッフからも、当たり前が当たり前でないことに気づかされたことも多いのです。
考えてみれば、ご本人さんは
自分で望んで施設入所、日中の生活の場、
グループホームに入っていない方も多いわけです。
しかも「こんな暮らしがしたい」と伝えられず、
どんな暮らしがあるのか体験したこともない方たちが圧倒的に多いわけです。
当時のスタッフに「人としてどうか?」という事を常に投げかけて支援を組み立て、
ご本人の代弁者である保護者さんに確認を取り、
地域のサポーターを集め一人暮らしを進めてきました。
そんな中、昨年虐待報道で皆さんの記憶にも新しい、
社会福祉法人にしおこっぺ福祉会 清流の里に1年の出向になりました。
職員が6人懲戒解雇され人が少ない中、
知的協会加入の法人から応援部隊を組み、外部から手伝いに入っている状態です。
ご本人のニーズのための土台が無い状態の中、
ご本人たちは食事を食べ入浴をして寝る。
職員が業務として行われている事に応じている状態に見えました。
中にいる職員は疲労していて、
いつまでこの激務の業務をこなさなければいけないのか?
という意見が多かったのです。
この業務というもの、日勤のする仕事。夜勤のする仕事。
ご本人のサポートのための間接業務が多く
必要な記録すらも満足に出来ない。
サポートの仕方が解らず、
遠くから言語が理解できない人に、支援者が声掛けで指示をする。
職員間の中でご本人についての話し合う場もない。
このような環境・状況に36名のご本人さんたちは
自分の生活を意志とは関係なく委ねているような状況です。
職員が少ない中で
ご本人たちの生活環境を整える取り組みを
この10ヶ月間行っているのですが、
課題は山積みです。
しかし、少しずつですが
ご本人の笑顔や発信が以前と違っているのを感じます。
現在清流の里は
ご本人のニーズや特性に対するアセスメント取り、
障害特性に合った支援、
また「人としてどうなのか?」という支援の基本が職員にも浸透し、
行動障害の状態像軽減になってきています。
職員の支援に対する姿勢が変わってきたことで、
ご本人さんの笑顔や自分が何をしたいか?
ご本人なしでご本人の事を決めない取り組みが
出来てきたのだと感じています。
職員には業務ではなく
ご本人さんから学んで支援をしてほしい。
チームとして最低限の報連相・記録の有効性を学んでほしい。
という基本がやっと浸透してきたかと思います。
最後に
「障がい者である前に一人の人間」を
絶対に忘れないで関りを持って行く事。
支援者は一人一人と向き合い学ぶ事は大切。
それには支援者個々を支えあうというチーム力。
全員が平等に支援について語ることの出来る環境づくりが大切なことで、
心に余裕をいかに持ち
ご本人に向き合えるかがこの仕事のやりがいです。
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